【第5話】コロナ後を夢見て

春夏秋冬、また春が過ぎ・・・。
「写真撮ってる~?」「もう何カ月もカメラ触ってない・・・」
これがすっかり挨拶言葉になって、あっという間に一年以上。
出来なくなった事ばかりに目を向けてため息をついていても切なくなるので、最近の私は、日常が戻ったら撮影に行ってみたい場所探しを楽しんでいる。

その方法は・・・というと、オンラインツアー。
「兼高かおる世界の旅」というテレビ番組を覚えていらっしゃるだろうか?
(1959年-1990年の31年にわたって放映された海外旅行番組の先駆け)
まさにあの雰囲気で、現地在住のガイドさんや街の人と会話しながら生配信で楽しめる。
旅行が非常に困難になった今、世界各国の観光庁や都道府県、大手旅行会社などがたくさんのオンラインツアーを提供している。無料やワンコイン程度の料金設定もあるので、撮影の下見に出かける感じでお気軽にチャレンジ中である。
ガイドブックで読むのと現地をリアルに知るのは大違い。旅行先として取捨選択の一助になる。
ここで立ち止まってこういう風に撮影したらどうかな?・・・なんてことも考えたりする。望み通りに自在にカメラを向けてくれるので、アングル確認もバッチリだ(笑)。

という訳で、今回は、私が是非とももう一度撮影に挑みたい場所をオンラインならぬ誌上ツアーでご紹介!
そこはアラスカ。

お薦めポイントその1。近い!
とっても遠いイメージだけど、直行便なら6時間程度。身体が楽ちん一番大事。
そういえば、子供の頃はどこに行くにもアラスカ経由で、燃料補給が必要だったなぁ。懐かしい思い出だ。

お薦めポイントその2。美味しい!
本タラバ蟹・ズワイ蟹・鮭・おひょうなど、世界中の高級レストランが仕入れ競争をする激戦区。旅先のゴハン大事。
希少すぎて外に流通しない蟹もあり、これがまた格別に美味しい。鮭にはたくさんの種類があり、夫々味がハッキリと違う事をここアラスカで知った。きき酒ならぬきき鮭。自信をもって当てられるのは塩鮭に使う鮭のみという悲しい日本人の私・・・。




お薦めポイントその3。フォトジェニック!
テレビ番組では厳冬の中で耐え忍びながらオーロラを待つ旅行ばかりを紹介するが、氷点下40℃での撮影は辛い。自分だけでなく、カメラも辛い。
なので私は夏休みにアラスカを訪れた。そう、夏でもオーロラは見えるのである。
夏は楽しみがてんこ盛りだ。毎日オーロラだけを待って過ごさなくて良い。
鉄道写真も山岳写真も動物写真も撮れるのだ。

アンカレッジからデナリ国立公園には車でも行けるが、私はアラスカ鉄道を選んだ。
街を抜け、緑の中を走り、氷河の雪解け水で青灰色の渓流を眼下に眺め・・・。天井までガラス張りの展望車両やデッキがあり、移りゆく絶景撮影と食事をゆっくりと楽しむことが出来る。

デナリ国立公園に到着すると、お気軽な野生動物観光バスツアーがあり主要ホテルまで迎えに来てくれる。公園内は全長150Kmの自然道が1本あるのみなので、自ずと野生動物は遠くにいることが多いが、グリズリーなどを見つけてはバス車内積載カメラでテレビ画面にズームして映してくれる。
日本では相当登山を頑張らないとお目にかかれないライチョウは、ロッジの庭でよく見かけるほど身近な鳥だ。
標高が高すぎて木が生えないデナリの秋は、下草が一面真っ赤に紅葉して美しい。目線を上げると、北米最高峰6,190mのデナリ山。2015年にマッキンリー山からデナリ山へと正式名称を変えた経緯や、あの山のどこかに今も眠る植村直己さんへ想いを馳せながらシャッターを切る。




リバークルーズをして猟師さんのお宅を訪問したり、ゴールドラッシュ時代を真似て砂金掬いに挑戦したり。
氷河クルーズは湾内なので船の揺れも少ない。ラッコやアザラシ、シャチに出会える。
巨大な氷河や迫力満点の氷河崩落シーンも目の前で。
氷河が崩落する前に雷のような轟音が何度も鳴り響いたこと、巨大すぎた崩落の波しぶきで船が大揺れしたことにはとてもビックリした。
崩落した氷河を網ですくい取って、ツアー客達にオンザロックをふるまうお手伝い。悠久の時を経て凍った氷は硬くいつまでも融けないので、最後まで水っぽくならずに楽しめて大層美味しい。
すっかり仲良しになった船員さん達がお土産用の帽子やTシャツ、ぬいぐるみなどを全てプレゼントしてくれた。ツアー料金の何倍もの大赤字だけど大丈夫?

チェナの温泉地では、世界4大犬ぞりレースでアジア人として初めて優勝した今野道博さんと偶然出会う幸運に恵まれた。アラスカの自然や歴史についてお話をうかがいつつフォトハイキング。熊の爪痕やビーバーの削り痕の鋭さにおののきながら、数時間森の中を一緒に歩く。
自生しているブラックベリーやブルーベリー、クランベリーをついついモグモグ摘まんで歩いてしまうが、ほどほどに。北の厳しく凝縮された自然の恵みを野生動物達と分け合う貴重な体験をする。

先住民のお宅にも連れて行って頂き、決して懐かない筈のそり犬達に大歓迎を受ける。
特別の特別にそり犬の赤ちゃんを抱っこさせてもらったりもした。
万が一私が仔犬に何らかの病気をうつしてしまうと、親犬達にも伝播する。全滅する。すなわち彼らは犬ぞりという移動手段且つ生計をたてる手段を全て失うということ。一見さんの私にそれほどの覚悟を持ったおもてなしをしてくださることに恐れおののいたが、朴訥な笑顔と共にこう言われた。
「他の人には絶対触らせない。たとえ大切な友人や親戚でも。犬達が君を一瞬で信頼したからね。動物は人を見抜くんだよ」

たくさん遊んで疲れた身体を癒すのは温泉だ。しかも源泉かけ流しの露天風呂!のんびりと温泉に浸かりながら、日が暮れてオーロラが出るのを待つ。
庭を散歩すればこんな巨大なムースに出会う。「森の王」とも言われるムースは肩までの高さ2.3m。頭から胴まで3.1m。ヒグマが襲っても負ける(死亡する)ほど危険なことが知られているので、出会ったらそっと逃げる。
なのに赤ちゃんムースがどんどん私に近寄って来る。危険!危険!!動物に好かれるのも命がけ。

文字通り終日撮影天国のアラスカでこんなに楽しんだのに、なぜ是非とももう一度撮影に挑みたいの?と言うと・・・。
メインイベントのオーロラ撮影に失敗したから!(涙)

夏といっても夜は氷点下。観察小屋の中でココアを飲みながらオーロラ出現を待っていると、「出た!」の合図で飛び出しても間に合わない。
限界まで外でじっと耐え忍んだ末に諦めて小屋に引っ込むと、また「出た!」で外に走る。
やっぱり我慢して外で待機。手はかじかむし、バッテリーは猛スピードで無くなっていく。レンズも曇る。

肉眼では言葉を失うほど綺麗なのに、その美しさを写真に収めることが出来なかった。
オーロラは、光の強さも色も大きさも毎回違う。しかもうねうね動く。設定を瞬時に決めきれず、御覧の通り、ボケボケ失敗作のオンパレードだ。
誰か私をオーロラ撮影の旅に連れて行って下さい。撮影方法を教えて下さい。お願いします!

私が旅先でいつも行うのは、博物館・美術館でたっぷり時間を使って、文化や歴史を学ぶこと。
郵便局や市場、地元の方しか行かないカフェなどで日常生活を知ること。
それから現地ゆかりの本を現地で読むこと。今回は先述の植村直己さんと写真家の星野道夫さんの本を持参した。
フェアバンクスの街に戻った最終日。星野さんの写真が飾られている小さなギャラリーを地元の方に教えて頂き訪ねたところ、偶然にも星野さんの奥様がいらっしゃった。暫し歓談。貴重な思い出となる。
いつか、星野さんのような命の輝きに溢れる写真を奇跡的に一枚撮れたら、最高に幸せ。


写真・文:山田祥子

山田祥子(Yamada Yoshiko)プロフィール

構図講座をきっかけに、2014年からアルトフォーカスに参加。

幼いころからブローニー・二眼レフカメラ・ポラロイド・110フィルムなど様々なカメラに囲まれて育つ。新たに齢90を超える伯母愛用のカメラをまもなく譲り受ける予定(笑)。

国内外を暮らすように旅することが大好き。初渡航は数ヶ月かけてのアメリカ大陸横断旅行。以降、訪問国は数十ヶ国に上る。特にアフリカは20年以上前から度々訪れ、近年は年1回は欠かさず通っている状態。

実は趣味のゴスペルで、有名人の全国ツアー共演なども・・・。

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